~プレバイオティクスと感染症対策~ ②(1/2) -
インフルエンザ感染の減少に
高発酵性食物繊維の効果の有無を検討
排便コントロールを目的にPHGG配合流動食を導入
重症化リスクの高い高齢患者が増えるなか、院内での感染症予防への必要性は大きくなっている。食物繊維によって免疫力の向上を図り、インフルエンザの感染予防に取り組んだのが、松寿会病院の看護師、荻原巳穂子さんだ。同院は病床数90床のⅠ型介護医療院であり、およそ8割が経管栄養管理となっている。
同院では2015年より、食物繊維グアーガム分解物(PHGG)を配合した高濃度流動食(以下、PHGG配合流動食)を経腸栄養管理に採用している。その導入以降、インフルエンザの発症率が下がっていることに注目したのが荻原さんだった。もともとは、排便コントロールでの効果を期待して導入したものだったという。
PHGGは食物繊維のなかでも発酵性が高いという特徴をもつ。PHGGが腸内細菌のエサとなり発酵されることで、酪酸などの短鎖脂肪酸が産生される。この短鎖脂肪酸は大腸粘膜のエネルギー源となるほか、腸内を酸性側に傾ける働きをもつ。したがって、PHGGを摂取することで、乳酸菌やビフィズス菌などの有用菌が棲みやすい弱酸性の環境に整える効果が期待できるのだ。
「それまでは明らかにブリストルスケールの7(水様便)の便性状が目立っていたため、排便コンロトールの改善を期待して、PHGG配合流動食を導入しました」
それと同時に実施したのは、ブリストルスケールによる便性状の評価の多職種共有だ。介護職員もブリストルスケールで評価ができることをめざした。下剤の多用を防ぐために、ブリストルスケール6~7(泥状便~水様便)である場合、下剤の量を5滴減らすといったルールも新たに設けた。その結果、ブリストルスケール6や7といった便が減り、便性状の改善が認められたという。併せてシーツ交換などの手間が減り、介護職員の負担の軽減にも結び付いた。