褥瘡と栄養セミナーレポート -
※この記事はネスレ栄養ネットで2023年7月に配信したWEBセミナーの概要をまとめたものです
褥瘡発生の最大のリスクは低栄養!創傷治癒の段階に応じた治療が重要
水戸済生会総合病院 消化器一般外科・乳腺外科 部長 野﨑礼史 先生
創傷治癒とは
皮膚や皮下組織にできた損傷を創傷と言います。1か月以上治らないような創傷を慢性創傷と呼び、褥瘡はその一つです。創傷治癒過程には止血期・炎症期・増殖期・成熟期の4つのステージがあります。なかなか治らない慢性創傷は創傷治癒過程(表1)のどこかでつまずいていると考えられます。
①止血期 (受傷後5~6時間) |
一次止血として血小板が凝集して血小板血栓を作り、二次止血としてフィブリノーゲンがフィブリンに変化して血栓を固める。血小板は白血球(好中球、マクロファージ)を傷の中へ遊走するように号令をかける。 |
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②炎症期 (受傷後3~4日まで) |
毛細血管やリンパ管の透過性が亢進して、滲出液が増える。白血球が細菌や壊死物質を貪食し、創が清浄化される。 |
③増殖期 (~2週間) |
マクロファージから分泌された細胞増殖因子によって、毛細血管が新生され、線維芽細胞の増殖・コラーゲン生成により 肉芽組織が形成される。 |
④成熟期 (2週間~数か月) |
線維芽細胞や毛細血管が消失し、コラーゲン線維が変化して肉芽組織が瘢痕組織に変化する(コラーゲンの架橋化)。表皮細胞が遊走して創が収縮・閉鎖され、上皮化が完成する。 |
創傷治癒過程の各ステージに主役となる細胞がいます。止血期は血小板、炎症期は白血球、増殖期は血管内皮細胞と繊維芽細胞、成熟期は表皮細胞です。
褥瘡の創面の色は創傷治癒過程を反映しています。黄色は壊死した脂肪組織などで炎症期に、赤色は血管に富む肉芽組織で増殖期に、白色は周囲皮膚の上皮化で成熟期に当たります。黒色は壊死組織の塊です。